ウサギの抗体は一般に利用されるげっ歯類にはない特徴を持っています。マウスやラットでは取得できない抗体も、ウサギであれば取得できる可能性は高くなります。
従来、ウサギモノクローナル抗体を作製する過程ではハイブリドーマの作製効率が低いという問題がありました。しかし、現在では シングルセル法で効率的に取得できる(※1)ようになったり、融合効率と安定性に優れた240E-W2などのの細胞株が開発(※2)されたりと、実用的な技術が登場しています。
この記事ではウサギモノクローナル抗体に関して、販売されている抗体と受託作製サービスについてそれぞれ解説していきます。
ウサギは、抗体作製で利用する動物として他の動物種にはない優れた特徴をいくつか持っています。例えば低分子化合物をターゲットとする場合、マウスやラットでは抗体の取得が困難ですが、ウサギであれば成功する可能性が高くなります。
ウサギの抗体は、たった1つのアミノ酸の違いでも識別できるような微細な違いも認識できる能力を持っています。また、リン酸化やグリコシル化などの翻訳後修飾の微細な違いも見分けられ、さらにマウスやラットといったげっ歯類ではできない、ヒト抗原のエピトープを認識できる可能性もあります。
マウスやラットなどのげっ歯類の場合、低分子化合物を抗原として使用しても抗体の取得には適していません。
対してウサギの場合、低分子ペプチドやその他の低分子化合物に対しても強い免疫反応を示すなど、他の動物種にはない特長があります。
ウサギの抗体は、相補性決定領域(CDR)内のアミノ酸が豊富であるため、抗原に対する結合能力が非常に高いです。例えば、マウスのH鎖のHCDRには最大で15のアミノ酸が含まれるのに対し、ウサギでは最大で20のアミノ酸が含まれます。これが高い親和性と多様性をもたらします。
また、ウサギの抗体は熱にも強いため、さまざまなアプリケーションに利用されています。ウエスタン・ブロッティングやELISAだけでなく、免疫組織染色や免疫細胞染色などの染色用途でも利用可能です。さらに、安定性や高い感度が要求される診断薬の開発への応用にも期待されています。
B細胞のレパートリーが豊富な点もウサギの特徴です。1つのB細胞は1種類の抗体しか作れません。しかし、ウサギはB細胞のレパートリーが豊富なので、他の動物種では抗体ができない場合でも作成できる可能性があります。
ウサギはマウスなどに比べると体が大きいので、より多くの組織や血液の取得が可能です。複数回採血を行えることから、途中段階での抗体価を評価しながら抗体作製を進められるメリットがあります。
マウスで取れない抗体が見つかる
モノクローナル抗体作製
受託サービス会社一覧
「モノクローナル 抗体受託」でヒットした100サイトの中から、抗体受託会社として公式HPが確認できた55社のうち、ウサギ由来のモノクローナル抗体に対応し、自社内に抗体作製が可能な設備のある企業をご紹介します(2024年1月31日調査時点)。
iBodyは、ウサギおよびヒトのモノクローナル抗体探索の受託サービスを提供しています。マウス抗体では取得困難な低分子抗原、わずかなアミノ酸の変異や修飾などを識別する抗体の取得が可能です。
さらにEcobody技術により、従来の抗体医薬品では十分な効果が得られなかった疾患に対しても有効性のある医薬品の研究開発を進めています。
費用 | 成功報酬プラン (B細胞の解析後、選別、Fab抗体の作製、評価、配列解析の実施を推奨したケースに限る) |
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抗原 | 一般的なタンパク質、ペプチドの他、リン酸化ペプチドなどの翻訳後修飾、低分子抗原、抗体医薬品、核酸医薬品など |
おおよその必要期間 | 最短1か月程度(動物の免疫期間は含まない) |
納品物 | 抗体遺伝子と配列情報(10クローン~) リコンビナント抗体 |
対応オプション | フル解析~簡易解析 成功報酬プラン |
Ecobodyは名古屋大学で開発された革新的な特許技術です。シングルセル法と無細胞抗体発現技術を組み合わせることにより、最短2日間での抗体取得・評価を実現しました。
従来のようにハイブリドーマを作る必要がないので、増殖過程でB細胞の脱落がなく本来ヒトや動物が持っている抗体の多様性を維持したまま抗体を取得できます。
また、試験管内での反応によって抗体を発現させるので、全ての抗体を一定量発現させることができるため、最短2日間という極めて短時間での抗体取得を可能としたのです。
公式HP | https://www.ibody.co.jp/ |
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電話番号 | 052-753-8654 |
ジェンスクリプトグループは約1.5万件のプロジェクト(※)を行ってきた実績のあるグローバルカンパニーです。
モノクローナル抗体を作製においては、独自のOptimum Antigen Designツールによって抗原設計からペプチド合成、動物免疫、抗体精製、QC検定まで一貫したワンストップサービスを提供しています。動物施設・実験施設は、AAALAC International(国際実験動物ケア評価認証協会)とOLAW(NIH実験動物福祉部門)から実験動物の適切な管理と使用を行う施設として認証を受けています。
費用 | 公式HPに記載なし(要見積もり) |
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抗原 | タンパク質、ペプチド、低分子化合物、DNA、mRNA、ウイルス様粒子(VLP)、細胞株など |
おおよその必要期間 | 最短13週間 |
納品物 | ・精製抗体(リコンビナント抗体) ・シークエンスレポート |
対応オプション | 追加のシークエンシングおよび上清の提供など |
ジェンスクリプト社が独自に開発したB細胞クローニング技術により、目的とする抗原に対して多様で高い親和性を持つウサギモノクローナル抗体を短期間・低価格で作製できます。
公式HP | https://www.genscript.jp/ |
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電話番号 | 03-6811-6572 |
営業時間 | 月曜~金曜(祝日、年末年始は除く)9:00~18:00 |
モノクローナル抗体作製
受託会社「ジェンスクリプトジャパン」の
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バイオロジカ社では、ハイブリドーマおよびファージディスプレイによるモノクローナル抗体作製サービスを提供しています。DNA合成の分野ではプライシングリーダーとして市場の形成に貢献しています。
費用 | 公式HPに記載なし |
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抗原 | 公式HPに記載なし |
おおよその必要期間 | 抗原情報(ペプチド配列、遺伝子)提供から抗体作製まで70日間 |
納品物 | 公式HPに記載なし |
対応オプション | 公式HPに記載なし |
ウサギのモノクローナル抗体作製では、一般的に利用されるハイブリドーマ技術ではなく、Creative BioLabs社のファージディスプレイ抗体ライブラリ技術によって独自のウサギモノクローナル抗体生産プラットフォームを構築しています。
公式HP | https://www.biologica.co.jp/ |
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電話番号 | 052-262-6732 |
営業時間 | 平日 10:00~17:00 |
モノクローナル抗体作製
受託会社「日本シノバイオロジカル」の
詳細はこちら
1969年の創業以来、4,000品目以上の抗体製品を自社で開発(※)。このノウハウを生かした抗体作製受託サービスは、受託前のコンサルテーションから納品後対応までサポートし、18年間で10,000件以上のカスタム抗体(※)を作製しました。
受託や共同開発を通じて200以上のターゲット分子に対する抗体医薬を開発し、抗体関連の自社保有ライセンスは20以上、自社で開発してライセンスアウトした特許は6件です。
費用 | 公式HPに記載なし |
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抗原 | 公式HPに記載なし |
おおよその必要期間 | 7.5カ月 |
納品物 | IgG抗体 |
対応オプション | 公式HPに記載なし |
ポリクローナル抗体の評価結果をもとにモノクローナル化の過程に進みます。
免疫した後、リンパ組織からRNAを抽出して、抗体ファージライブラリを作製。抗原に特異的なscFV抗体を単離して抗体遺伝子配列を解析、最後にscFv抗体をIgG化して調製します。
公式HP | https://ruo.mbl.co.jp/ |
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電話番号 | 03-6684-6860(代表)、0265-93-1707(製品の問い合わせ) |
営業時間 | 公式HPに記載なし |
モノクローナル抗体作製
受託会社「医学生物学研究所(MBL)」の
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極東製薬⼯業株式会社は、⽶国Abwiz Bio社と提携し、Abwiz Bio社が独自開発した抗体親和性向上サービス(Affinity Maturation)、カスタム抗体作製サービスをはじめ、ウサギモノクローナル抗体取得サービスを日本国内向けに提供しています。
費用 | 公式HPに記載なし |
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抗原 | ・リン酸化、メチル化、グリコシル化タンパク質 ・低分子化合物(ホルモンなど) ・ウイルス(SARS-CoV-2 vs. SARS-CoV) ・イディオタイプ ・Gタンパク質共役受容体(GPCR) |
おおよその必要期間 | 6カ月 |
納品物 | 任意の発現ベクターで全長IgG発現が可能な抗体遺伝子配列を納品 |
対応オプション | ・リコンビナント抗体作製 ・ヒト化抗体作製 ・個々のクローンのシークエンス解析 |
ウサギが持つ数十億以上の抗体遺伝子の抗体ライブラリを利用し、多様なパニング・スクリーニング法によって高い精度で目的抗体を選抜します。独自のWizAmp法を用いてクローニングの精度を飛躍的に高め、遺伝子ライブラリのカバレッジを最大化することに成功しました。
従来、ウサギのモノクローナル抗体作製は難しいとされてきました。しかし、独自開発したクローニングベクターによって、大腸菌での発現にバイアスがかからないよう特殊なエンジニアリング技術を駆使し、重要抗体の取りこぼしの可能性を最小限に抑えています。
公式HP | https://www.kyokutoseiyaku.co.jp/ |
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電話番号 | 03-5645-5661(代表)、03-5645-5664(製品に関する問い合わせ) |
営業時間 | 9:00~17:30(祝祭日および夏期、年末年始の休業日を除く) |
モノクローナル抗体作製
受託会社「極東製薬⼯業」の
詳細はこちら
Googleで「ウサギ モノクローナル抗体 実験用」のキーワードで検索し、上位50位までに表示された中から、公式HPでウサギ由来の抗体製品が確認できた会社のうち、商品点数が多かった5社を上からご紹介します(2024年2月6日調査時点)。
さまざまな用途に利用される抗体が数多く市販されていますが、目的とする抗体がない場合はモノクローナル抗体の受託作製サービスを利用すると良いでしょう。
HP | https://www.shigematsu-bio.com/ |
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HP | https://www.sigmaaldrich.com/ |
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HP | https://jp.sinobiological.com/ |
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HP | https://www.nacalai.co.jp/ |
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HP | https://www.funakoshi.co.jp/ |
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ウサギはモノクローナル抗体の取得に極めて有用な動物です。市販でも多くのウサギモノクローナル抗体が発売されており、ウサギの抗体作製を受託している会社も多数あります。
目的の抗体を取得するためにはそれぞれの製品や会社の特長をしっかりと把握することが重要です。そして適切な委託先を選ぶことで、求める高品質な抗体を取得することができ、研究開発を加速させることができます。各社の特色を正確に理解し、プロジェクトニーズに合ったパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。
本サイトでは、抗体取得に有益な情報を多数掲載しています。目的とする抗体を取得できずに困っているのであれば、以下のページを参考にしてください。
マウスモノクローナル抗体は、取得する抗体の多様性や、親和性・特異性が限定的なこと、マウス疾患モデルで免疫染色を行う場合に問題が生じることがあることなど、いくつもの課題を抱えています。
ここではウサギ・ニワトリ・ラクダ科動物・ヒトといった4種類の動物を中心に、合った目的や特徴について詳しくまとめました。
iBodyのウサギモノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ
iBodyのウサギモノクローナル抗体作製の特徴
ファーマフーズのニワトリモノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ
ファーマフーズのニワトリモノクローナル抗体作製の特徴
RePHAGENのラクダ科動物モノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ
RePHAGENのラクダ科動物モノクローナル抗体作製の特徴
iBodyのヒトモノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ
iBodyのヒトモノクローナル抗体作製の特徴