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二重特異性抗体の技術

新時代の医薬品開発を牽引する
二重特異性抗体の技術

抗体医薬品市場の拡大と共に、多様な抗体工学技術が発展しています。中でも二重特異性抗体技術は注目されていますが、その承認されている例はまだ限定的です。

このページでは、現在盛んに行われている二重特異性抗体技術に関する研究について、『実験医学増刊 Vol.40 No.20 治療の可能性が広がる 抗体医薬』で紹介されたいくつかの技術を解説していきます。

[出典]実験医学増刊 Vol.40 No.20 治療の可能性が広がる 抗体医薬│羊土社

二重特異性抗体による創薬開発

二重特異性抗体の創薬開発は、複雑な分子設計や製造プロセスが課題です。しかし、複数の病態を同時にターゲットできるなどの期待があります。

二重特異性抗体への期待

二重特異性抗体は抗体医薬分野において大きな期待を集めています。

これらの抗体は、細胞間架橋の形成、近接効果の利用、標的の二重阻害、および二種類の抗原に依存的な細胞ターゲティングといった独自のメカニズムを通じて、従来の単一特異性抗体では達成できなかった治療効果を実現する可能性があります。

この技術により、一つの抗体分子が複数の病態プロセスを同時に標的にすることができ、がん治療や自己免疫疾患治療において新たな選択肢を提供することが期待されています。

例えば、一つの抗体が腫瘍細胞上の二つの異なる抗原を同時に認識し、より効果的に腫瘍細胞を排除することが可能になるかもしれません。このような技術的進歩は、抗体医薬の可能性をさらに広げるものであり、多くの患者に新たな治療の道を開くことが期待されています。

二重特異性抗体による医薬品開発事例

T細胞リダイレクティング抗体ERY974

T細胞リダイレクティング抗体ERY974は、ヒトCD3εとGPC3に結合し、T細胞の活性化と腫瘍細胞への攻撃を促進する効果を持つ二重特異性抗体です。この抗体は、特定のがん細胞に対して高い特異性と効果を発揮し、従来の治療では難しいがんの治療可能性を提供します。

その製造過程での課題は、非特異的にアゴニスト作用を誘発する可能性のある抗CD3ε単一特異性抗体の副産物の排除でした。この問題は、ART-Ig技術を採用することで解決されました。この技術により、精製プロセス後の副産物を検出限界以下に減少させることが可能となり、安全かつ効果的な抗体の生産が実現しました。

ファリシマブ

ファリシマブは、糖尿病性黄斑浮腫や加齢黄斑変性などの疾患に対する二重特異性抗体で、ANG-2およびVEGF-Aの経路を同時に阻害します。この二重阻害効果により、血管の漏出と新生血管形成を効果的に抑制し、視力喪失のリスクを低減する期待があります。

工業生産における課題は、二重特異性抗体の複雑な構造による最適化と製造の難しさでした。これを解決するため、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社はCrossMab技術とFAST-IgTM技術を開発し、4本鎖IgG型のファリシマブを高純度で生産しました。

臨床試験では、ファリシマブがアフリベルセプトと比較して非劣性であり、一部の患者では最長16週間隔の投与が可能であることが確認されています。

血友病A治療薬NXT007

NXT007は、血友病Aの治療を目的とした新世代の二重特異性抗体であり、エミシズマブの開発で直面した最適化の限界をFAST-IgTM技術を用いて克服しました。

この技術は、非共通軽鎖を採用し、薬物動態を改善するためのFc部分の改変も含む多面的な最適化を実施しました。血液凝固第VIII因子の機能不全を補うこの抗体は、FIXaおよびFXに対するFVIII機能代替活性を持ち、定期的な補充療法に比べ利便性が向上しています。

in vitroおよびin vivo試験では、NXT007はエミシズマブと比較してFVIII様活性の差を示し、顕著に血液凝固能力を高めました。現在、健康なボランティアと血友病A患者を対象にした第I/II相臨床試験が進行中で、その結果が待たれています。

目的の抗原が取れないときは

二重特異性抗体は医薬品開発の新たなフロンティアであり、複数の病態を一度に標的にすることで従来の治療法を超える効果が期待されます。しかし、その複雑な分子構造により、製造過程における最適化と生産が大きな課題となっています。この問題に対処するため、現在でも様々な研究が進められています。

標的に結合するモノクローナル抗体を探索するなら、求める親和性や特異性を発揮できる動物選びが重要です。動物の特性を正しく理解し、適した手法で取得できる受託会社に依頼しましょう。

このサイトでは、動物の特徴や取得手法の違いをお伝えした上で、動物種別のおすすめモノクローナル抗体作製受託会社をご案内しています。委託先選びの参考にしてみてください。

マウスで取れない抗体が見つかる
モノクローナル抗体作製
受託サービス会社一覧

【動物別】
おすすめのモノクローナル抗体
作製・探索受託会社4選

マウスモノクローナル抗体は、取得する抗体の多様性や、親和性・特異性が限定的なこと、マウス疾患モデルで免疫染色を行う場合に問題が生じることがあることなど、いくつもの課題を抱えています。

ここではウサギ・ニワトリ・ラクダ科動物・ヒトといった4種類の動物を中心に、合った目的や特徴について詳しくまとめました。

Google検索で「モノクローナル 抗体受託」と検索した結果より、モノクローナル抗体の取得・探索・作製受託を行う会社・39社を調査(2023年6月7日調査時点)。
日本抗体学会(https://antibodysociety.jp/)に所属している企業の内、対象の動物種からモノクローナル抗体を作製するサービスを提供している会社をピックアップ。

特許技術「Ecobody®」で
高機能ウサギ抗体を迅速に取得
iBody株式会社

iBodyのウサギモノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ

  • 高い親和性と特異性を活かした免疫染色を実施したい
  • わずかな違いのある抗原を見分け、低分子抗原を高感度に検出したい
  • 高感度な診断薬を開発したい

iBodyのウサギモノクローナル抗体作製の特徴

  • 遺伝子配列に依存せず、高機能な抗体を取りこぼすことなく評価できる
  • B細胞の不死化や培養が不要
  • 最短2日間という極めて短期間で抗体を取得・評価可能

iBodyの公式サイトで
抗体作製受託サービスを見る

独自技術「ALAgene(R)」で新たな創薬ターゲットを開拓
株式会社ファーマフーズ

ファーマフーズのニワトリモノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ

  • 相同性が高く、哺乳類では得られなかった抗体を取得したい
  • IgY抗体を取得したい

ファーマフーズのニワトリモノクローナル抗体作製の特徴

  • 創薬ターゲット分子に対しての抗体作製が可能
  • 同じ性質の抗体を安定的に供給可能

ファーマフーズの公式サイトで
抗体作製受託サービスを見る

独自の抗体ライブラリーにより10日前後でVHH抗体作製可能
RePHAGEN株式会社

RePHAGENのラクダ科動物モノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ

  • 安定性の高いVHH抗体を取得したい
  • 低分子抗体を取得したい
  • 多価抗体や多重特異性抗体を作製したい

RePHAGENのラクダ科動物モノクローナル抗体作製の特徴

  • 豊富なライブラリーか最短10日で抗体開発
  • 熱やpHへの耐性がある高安定型ラクダ科VHH抗体を保有
  • 多様性を増大させたVHH提示ファージライブラリーを構築

RePHAGENの公式サイトで
抗体作製受託サービスを見る

「Ecobody技術®」で
有用なヒト抗体を取りこぼさない
iBody株式会社

iBodyのヒトモノクローナル抗体は
こんな目的におすすめ

  • 医薬品開発に適した抗体を取得したい
  • 感染症の感染者から感染ウイルス等を中和する抗体を同定したい
  • 自己免疫疾患の発症機構を解明したい

iBodyのヒトモノクローナル抗体作製の特徴

  • すべての抗体を発現可能で抗体の取りこぼしがない
  • 病変部位に出現する抗体を収集可能
  • 患者自己抗体の同定が可能

iBodyの公式サイトで
抗体作製受託サービスを見る